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カウンセラーの対談「第30回 うがわよしこ氏、向後カウンセラー対談<第1回>」
第30回 うがわよしこ氏、向後カウンセラー対談<第1回>
うがわよしこ プロフィール
米国アートセラピー協会公認登録アートセラピスト、EMDR Level1およびLevel2
デザイン職を経て渡米。ニューヨーク市スクールオブビジュアルアート大学院アートセラピー修士号取得。私立病院のデイセンター、州立精神病院の入院病棟、ブルックリン地区、クイーンズ地区二つの公立小学校等でアートセラピストとして個人、家族、グループセッションを担当する。ジューイッシュホームライフケアマンハッタン地区養護施設、および亜急性病棟に勤務しうつ、悲観になやむ高齢者への通年訪問型セラピーを実施。
インタビュー第1回
向後カウンセラー(以下 向後):日本帰ってきて、どのくらいになるんでしたっけ?
うがわよしこ(以下 うがわ):去年の9月に帰ってきたので、9ヵ月ぐらいですね。
向後:どうですか?
うがわ:どうでしょう?どうでしょうね。でも、慣れました。
向後:慣れましたか。
うがわ:はい、かなり。
向後:僕の場合、帰ってきてから半年ぐらい大変でした。
うがわ:私もけっこう、しばらくは大変でした。何かうまく噛み合ないというか、エネルギーを出す場所がなくて。
向後:エネルギーを出す場所って?
うがわ:自分がやってきたことを今まで通りアウトプットできる場所ですね。いきいきとできる場所ですか・・。
向後:なるほどね。僕は、自分ではまったくアメリカナイズされずに帰ってきたと思ったのですよね。全然違和感無く帰ってきたと思っていたんですけど、やっぱりどこか変化していたのでしょうね。
うがわ:そうだと思います。
向後:向こう行く前は、前世はアメリカ人だと思っていたのですが・・。
うがわ:あっ、そうなんですか?
向後:サンフランシスコが、オレを呼んでいると思っていまして・・。でも、行ってすぐ、「あっ、僕はアメリカ人じゃないな」とさとりました。日本人なんですね。ところが、帰ってきたときにどうも、少し向こうの影響が入っているのか、場の雰囲気とか考えずに、おもいついたらすぐに自分の考えを言ってしまうんです。
うがわ:うん、わかります。
向後:それで、空気が凍ったりとか、よくありました。
うがわ:私の場合は、今振り返ってみると、行く前から自分の思った事をもっと言いたいとは思っていたのですが、どこか周りに合わせてそれを抑えていたように思います。そんなことないですか?
向後:ん〜、そう言われれば、そうかもしれないですね。
うがわ:それが向こうにいって、開いちゃったみたいな。
向後:そうかもしれないような気がしてきました。向こうだと、どんなトンチンカンなこと言っても、とりあえず聞いてくれるじゃないですか。こっちだと、「なに馬鹿なこと言っているんだ」ってことになっちゃう。
うがわ:そうですね。
向後:それで帰ってきたときに、向こうの調子でしゃべっちゃったら、「こういう席で、そうした発言はいかがなものか」なんて言われちゃう。
うがわ:おっしゃるとおりで、向こうに行ったら行ったで適応が大変で、帰ってきたら帰ってきたで、「あれ?想像してたのとちがう」と戸惑うことがありました。夢にまで見た日本が・・という感じでした。
向後:でしょ?向こうにいると日本ていいなって思いますよね。
うがわ:いや、ホントに。途中から日本にあこがれてしまうみたいになりました。なんていい国なんだろうって。(笑)不思議ですよね。
向後:不思議です。僕は、向こうに留まるか日本に戻って来るかでだいぶ迷いました。最初の頃は、向こうにずっといようかななんて思ったのだけど、やっぱり日本が僕はいいんですよ。アメリカは疲れます。
うがわ:いや、もう。疲れます。今は帰ってきたばっかりなので、旅行でもしばらく行かなくていいです。(笑)
向後:わかるわかる。めいっぱい日本語しゃべりたいと思いますもんね。アメリカは、なにが疲れました?
うがわ:ニューヨークだったんで、向後さんのいらしたサンフランシスコとは違うかもしれませんが。ニューヨークはよくも悪くも人のエネルギーに溢れていて、アグレッシブですよね。世界中から人々が夢を求めて集まる大都市なので、生活の速度も速いし、競争も激しいですし。象徴的だったのが、一番最後の日、空港に行く前の日、郵便局に最後の処理をしに行ったんですけど、郵便局でいきなりどなられたんですね。郵便局のおじさんに。すごく理不尽で、「君は、僕の話しを聞いていない!」って怒りだすんですよ。
向後:何があったんですか?
うがわ:私、普通におじさんの話しを聞いていたつもりだったんですけど、なんか急に怒りだしたので、なんだろうって思いつつ、なんとか私の順番が終わったのですが、次の人にも、そのおじさんは、私の時と同じことを言って怒っているんですよ。「君は、僕の話しを聞いていない!」って。要は、そのおじさんストレスが鬱積している訳なんです。
うがわ、向後:(笑)
うがわ:それで、郵便局の狭いスペースでいらいらしながら待っている人達は、早くしてくれって言い出すし、一方、おじさんは、せっかちでわがままなお客さんに少人数で対応しているもんだから日頃のストレスが溜まりに溜まって...いわば怒鳴りあいのように。郵便局の中が騒然としました。
向後:何か言われたら、こちらも言い返さなきゃいけませんからね。
うがわ:そうそう、だから、こちらも言い返してという感じで、どんどんエスカレートしていくという感じで、体力がいりますよね。
向後:日本は、郵便局で体力使いませんよね。のほほんとできる・・。
うがわ:本当に思います。
向後:それが良くてね。アメリカの学校に行って、最初に思ったのは、クラスメートが、ばーっとしゃべってディスカッションするじゃないですか。
うがわ:えー、もうもう、ふぅ〜ってなっていました。
向後:えっ、そうだったんですか?僕だけかと思っていたんですけど。
うがわ:もう、どうしよう〜って、ほーんと、思っていましたよ。
向後:僕は、サンフランシスコだったから、絶対日本人のクラスメートいると思ったんですよね。
うがわ:あー、そうですよね〜。
向後:絶対日本人いるから、それで、そういう人達はまじめだろうから、僕は端っこの方に座って、わからないことがあったら彼らに聞いて、ノートを見せてもらって、なんてことを考えていたのですが、僕の行った統合カウンセリング専攻は、日本人は僕だけでした。うがわさんは、どうでした?
うがわ:私ひとりだけで。アジア人の留学生もひとりだけでした。
向後:私立の学校だと、ほぼ白人ですよね。
うがわ:そうです、そうです。
向後:僕は、あれで、まず気後れしましたね。しかも、日本みたいにテキストの丁寧な説明なんてなくて、ほんの少しレクチャーの後、いきなり、「さあ、ディスカッションだ」でしょ。みんながテキストを読んできているのが前提なんですよね。それで、さっぱりついて行けなくて・・。
うがわ:わかります。私、向後さんの本、「カウンセラーへの長い旅」を読んだんですよ。いっしょに働く人のことを知っておかなきゃと思って、日本に帰ってきてから読んだんですが。読んでたら、なんかなつかしくて、おかしいくらい同じような経験をしていたので、すごくよくわかります。でも、向後さんの方が、まだ・・。サンフランシスコっていいなって思いました。ニューヨークは、もうちょっと、ん〜なんだろう・・。
向後:けっこう、がつんと来る訳ですか?
うがわ:そうですね。
向後:僕らね、サンフランシスコは優しかったですよ。
うがわ:読んでいて、そういう感じはしました。ニューヨークにも信じられないくらい親切な人が沢山います。でも、基本的にとにかく時間の流れが早くて、超がつくほどの個人主義社会です。加えて観光客、移民、留学生がひっきりなしにくる土地柄なので、あまり、見知らぬ留学生に対する心や時間の余裕は、他の土地に比べるとないかもしれないですね。ただ、こういう自分の感想を「ニューヨーク」って言っていいのかわからないですけど・・。だって、自分が経験したことイコールニューヨークではないですよね。
向後:そもそも、「アメリカでは・・」というものはないし、「サンフランシスコでは・・」というのもないし、「ニューヨークでは・・」というのも無いですからね。
うがわ:そうなんですよね。ただ、向後さんの本を読んでいたら、サンフランシスコの空気みたいなものを感じて、「いいな」とは思いました。
向後:授業の中では、ほんとにトホホになるんですよ。でも息抜けるところがありました。学校の中に瞑想の部屋があったりしたんですよ。
うがわ:それは、サンフランシスコならではですね。
向後:ぽいでしょ?瞑想室の中に変な置物とか置いてあったり・・。
うがわ:裸足で歩いている人とかいそう・・。(笑)
向後:そうそうそう!それ、いるんですよ。(笑)
うがわ:いるんですね〜!
向後:例えば、授業の雰囲気なんかも、ほんとに勝手にしゃべるんですよね。これは、東部の学校であるかどうかわからないのですが、あるクラス、8人ぐらいのクラスだったのですが、そこで、授業の始めに「What's New」という簡単なアイスブレイクをやるんですよ。みんながひとりづつ、この1週間であったことを短く話すというものなのですが・・。僕としては、別に新しいことなんか何もないけど、とりあえずなんとか絞り出して、何か言う訳です。そうしたら、僕のとなりに座っていたヒッピーの化石みたいな長髪でひらひらした服を着た男子学生が、「今日は、そういう気分じゃない」と言って、何も言わなかったんですよね。(笑)
うがわ:いいですよね〜。なんか、サンフランシスコなら、すごくいそう。(笑)
向後:先生もね、あんまりいい顔はしなかったけど、「ああ、そうかい」って言って、いちおうそれぞれの考え方感じ方を尊重するということで、注意を受けることもなく、授業がそのまま進んで行くのですが、ニューヨークはどうでした?そういうことって、あり得るんですか?
うがわ:どうだろう?各々の学校のカラーなどで、多少違うかもしれないですけど、でも、人を尊重しますよね。
向後:しかめっ面の度合いが多少違うぐらいで、一応は尊重するんですね?
うがわ:そうですね。尊重すると思います。
(つづく)