本ウェブサイトでは、スタイルシートを使用しております。このメッセージが表示される場合には、スタイルシートをoffにされている、またはブラウザが未対応の可能性があります。本来とは異なった表示になっておりますが、掲載している内容に変わりはありません。

以下のリンクより、本文へジャンプができます。

HOME > カウンセラーの対談 > カウンセラーの対談 第18回

カウンセラーの対談「第18回 道幸俊也氏、向後カウンセラー対談<第1回>」

第18回 道幸俊也氏、向後カウンセラー対談<第1回>

道幸俊也 プロフィール

道幸俊也氏 資 格
キャリアカウンセラー(CDA)、オンラインカウンセラー(JOCA)、MBTI認定ユーザー (Japan-APT学会)

経 歴
人材アウトソーシング会社に入社。業務管理などの経歴後、米国シリコンバレーにある関連会社へ赴任し3年間滞在。途中、日本能率協会米国支社のプロジェクトに1年間参加などをする。日本帰任後は新規事業を立上げ、その後独立しOffice C&Mの代表取締役となり、キャリア開発をメインに人事戦略コンサルティング事業を展開する。現在、社会人向け(企業・行政・NPO法人)に自己理解のセミナーを実施するとともに、複数の大学において非常勤講師としてキャリア開発教育の講義とカウンセリングを担当している。

 

インタビュー第1回

向後カウンセラー(以下 向後):今日は、就活支援のキャリアカウンセリングを行っている道幸カウンセラーにお越しいただい、最近の就活事情についてお伺いしようと思います。4月から、関東学院に勤められているのですね。

道幸俊也(以下 道幸):はい。法学部の就職をなんとかしてほしいという要請がありました。

向後:かつては法学部と言うと就職の花形だったと思うのですが、なんで今、法学部が悪いんですか?

道幸:法学部と言うのは、最初の入り口が公務員志望が多いんですよ。入試広報も公務員を全面的にうたっているので、それを志望する子が、半数ぐらいいます。
しかし、ふたを開けてみたらそんなに甘いものじゃない。それで、調べてみると、親に言われたからと志望する人が多い。自分で本当に公務員になりたいからと思ってきている子は、そんなにいないんです。 例えば公務員でも警察とか消防とか、いわゆる特別職志望の学生ですね、あれは、最初からなんかきっかけがあって、それを目指そうとしている子は多いです。一方、一般の例えば市の窓口業務なんかを志望する子に、「なんでそれをやりたいの?」と聞いてみると、「う〜ん」となっちゃうんです。 道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

向後:本音は、安定しているからとか・・ね?

道幸:本当はそうなんでしょうけど、それが言えない。で、現実な話、最近公務員に対する考え方が変わってきて、そもそも公務員とはサービス業である。だから、コミュニケーション力がなければ、窓口業務なんてできない・・と。

向後:なるほどね〜。

道幸:去年ですかね?ある自治体の初めて面接官をやる160人の方を80人、80人に分けてトレーニングをするという研修会に行ってきたんですよ。その自治体が求める人材を採用すると言う前提で面接をやらなければならないわけです。それを今まで面接なんかやったことのない人たちに対してトレーニング講座をやるんです。
要は、質問とか傾聴するとかやるわけですけど、傾聴ができないわけですよ。

向後:どんなふうに、「できない」のですか?

道幸:も〜、すごいですね。あの、一通りトレーニングをしたあとに、私がデモンストレーションをするわけです。壇上にあがるのは、その年採用された新入職員たちで、面接されたての人達ですから、対応ができる訳ですよ。その人たちに対して模擬面接をしてもらうんです。アドリブで質問してもらうわけです。そして、当然そこで、「志望動機はなんですか?」とか「どうしてこの自治体なんですか?」とか質問して、新入職員が答える訳ですよね。

向後:うんうん。

道幸:私の方は、どんどん深堀りで質問して行く訳ですよ。本当に公務員をやりたいのかどうなのかということを確認するので、彼らはそれなりに自分の思いを語る訳ですよ。彼らはだから、今ここにいる訳ですからね。
終わった後に、感想を聞くと、「あんな質問、とてもできない」って、受講者が言うんですよ。しかし、このくらいまでは、面接官だったらやってもらわなけりゃ困るんです。

向後:そうですね。面接官ですからね。

道幸:そうです。そして、職員から返ってきた質問は、「質問って、どこまで質問したらいいのですか?」とかなんです。そんなの聞きたいことを聞けばいいわけじゃないですか?しかし、「質問はひとつの事柄に対し何回するべきなのか」とか、聞いてくる訳です。道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

向後:「・・べき」でくるわけですね?

道幸:そうそう。そういう何回とかのルールがないとできないんです。

向後:じゃあ、アドリブみたいのはできないんですか?

道幸:とても、そんなことできません。面接なんて生ものなんで、その場で出てくる言葉を拾うわけじゃないですか?そもそも論で、「どうして、公務員になろうとするのか?」とか、「世の中たくさん自治体があるのに、なんでここなのか?」とか。そういうのを聞けばいいわけですが、「どこまで聞いたら質問は終わりになるのでしょうか?」という質問ばかりでてくるんです。 これで大丈夫かな?

向後:そりゃあ、大丈夫じゃないですよね?

道幸:不安と言うか、これで面接して採用して、その自治体の職員の対応がまずいとか言われたらと考えると責任を感じましたよ。

向後:面接側がそれで、学生側もマニュアル化されているとなると、面接に何の意味も無くなっちゃいますね。

道幸:何の意味もなくなっちゃう。形式だけのものになってしまう。

向後:面接していて感じるんですけど、みんな同じようなこと言うんですよね?だれか教えてるのですかね?

道幸:たぶん、就活塾とか、こう言えばいいとか。最近は民間企業も賢くなって、マニュアルどおりで優等生的な回答をすると信じられないということで、そういう風に優等生的な回答をする人は落とすと言う傾向も出てきています。むしろ、本音でしゃべった方がいいところもあるようです。

向後:本音をしゃべったら落とされるんじゃないかって学生の方も思いますからね。

道幸:でも、逆に開き直ったやんちゃ系の学生の方が、本音でしゃべるので、彼らは内定いっぱい取ってきますよ。ひとりで7つとったのがいます。道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

向後:それは、すごいですね。

道幸:彼、就活始まる前は、頭がまっ金金だったんです。あいつ大丈夫かなと思っていたのですが、でもみごと7つ取ってきたんですよね。企業からすると、「こいつは、うそつかない」ということなのでしょう。面接でそつなく答えていたのが、ふたを開けたら、「えらいごまかされた」ということがあったのでしょうが、彼の場合、「そういうことはないだろう」と判断されたらしく、立て続けにそこそこ有名どころを7つ内定とって来たんです。

向後:7つというのは、今の時代すごいですね。

道幸:ですから、見ているところは、どこの企業もいっしょなんだなぁと思いました。

向後:しかし、それがはやると、今度やんちゃ系の人がたくさん出てくるんじゃないですか?就活塾で教えちゃったりして。

道幸:まあ、やんちゃ系は、なかなか演じようにも演じられないんじゃないかなと思います。そこまで腹が据わって開き直ってとなると、かなりの覚悟と言うか勇気が必要ですからね。どこの大学のカウンセラーさんや関係者と話をしても、出てくるのは、とにかく今の子というのは、最終的にはまじめなやつが多いと言うことです。
だから、どこかこう、全てがそうかわかりませんけど、小学校・中学校のときに少し目立つようなことをすると、いじめの対象になると。そうなると、出る杭打たれるじゃないですけど、目立たないように目立たないように意見を言わないように、あたりさわりのない処世術は身につけているんですね。故に、いざ企業に入ると、もう、意見が言えない。

向後:なるほど。

道幸:この間ある会社に行ったのですが、若手営業マンの研修をやってくれと言われたのですよ。そのとき営業本部長さんの言われたことがとても印象的だったのですけど、要するに、全国各地の営業所から定期的に営業マンを呼びよせて、営業方針会議をやるわけです。そこの報告で、最初に結論言って、なぜそうかとか、経緯いきさつはどうかというのは、ちゃんときちっと事実通りしゃべるんだけど、それをベースに自分がどう考えるのかが言えない。
結局、会社も金払って全国から呼ぶ訳ですからコストがかかるわけですよ。一番第一線で生の声を聞いている営業マンが、これからどうするかという方針を考えなきゃいけない会議なのに、事実ベースだけでいいのなら、報告書だけで十分で、わざわざ来てもらうまでもない。実際に現場でお客さまと接している若手営業マンの肌感覚を言葉でいいから知りたいのに、「それが言える奴らがほんとにいないんだよ」というのが、悩みの種と言っていました。

向後:「私はこう思う」というのを本当に言わないですね。確かに日本人の特性として、昔から「私はこう思う」ってあまり言わないかもしれないけど、最近ますます、KYとかなんとかで言えなくなっちゃっていますよね。

道幸:それも、僕ら以上に若い子達って、もう、いじめというのを肌で敏感に感じているのか、そういう風にすると、なんか叩かれるとか。

向後:面白いですよね。例えば、大学生のグループが同じ格好をしているんですよね。ギャル軍団と、ギャル男といのがいて、その横にB系というのがいて、B系って黒人系という意味らしいんですけどね、まじめ系がいて、ゴスロリ軍団がいて、僕は、550人教室で教えていたんだけど、みんな棲み分けしているみたいで、いつも同じ席に座っているんですよね。

道幸:地図があるんですね。

向後:そう、それでね、女の子から聞いたのですが、トイレもみんな同じ時間に行くから、ある時は、ギャル軍団がお化粧をしていて、ある時はゴスロリ軍団ばかりでという状況らしいです。
興味深かったのはね、「はぶる」という言葉を初めて聞いた時のことなのですが、「はぶる」というのは、グループからはぶくという意味らしいですね。ある子が、ひとつのグループからはぶられてさびしい思いをしていたんだけど、しばらくしてやっと新しいグループに入ることができた訳ですよ。それを僕に話してくれたので、「よかったね」と言ったんですよ。そうしたら、彼女は、「でも私は、ほかのメンバーから『○○ちゃんは、あとから来た人だから』と言われるんですよ」と言うんです。すごいなと思って。

道幸:は〜。

向後:みんなものすごくウォッチしてますよね。周りがどう思うかって言うことを。

道幸:あの、同世代とはしゃべれないけど、年上とはしゃべれるという子が多いです。

向後:へー。

道幸:同世代は、やっぱり、どう思われているのかが怖くてしゃべれないけど、年上だったら平気でしゃべれる。カウンセラーと、キャリアカウンセラーとはよくしゃべるのに、普段ぱっと見かけたら、全然友達としゃべっていないのですよ。「なんで?」ってきいたら、「やあ、怖いです」と言うのですよ。

向後:同世代が怖いっていうのはあるんでしょうね。これだけいじめが広まっているし、空気を読めないと攻撃対象になると言う雰囲気があるからなのかな。

道幸:そういう子達と就職の話をしていて、ちらちら出てくるのが親御さんの影ですね。就活も就職先も親が気に入ってくれるところじゃないとだめということで、いくら第1志望で、「ほんとここ行きたいんです」というのがだめだったり、あと、就活が始まる時期になると、絶対毎年、ちらほら出てくるんですけど、「就活やめます」というのが出てくるんですよ。

向後:えっ、「やめます」ですか?

道幸:どこか内定が決まって、それで「やめます」と言っているのかと思ったら違うんですよ。やりたいことが見つからないということを親に言ったら、お母さんが、「やりたいこと見つかるまで、家にいなさい」って言ったらしいんですよ。その言葉を聞いたら、それまで張りつめていた緊張の糸がひゅーっと切れちゃって。そのまま、就職が決まらないままに卒業しちゃうみたいな。道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

向後:それで、卒業してもその後何年か就職しないでいるのですかね。

道幸:そうです。そういう子が、過去に何人かいて、それで卒業してから来たんですよ。「やりたいこと見つかったんです」と。「でも、その空白の期間どうやって履歴書に書いたらいいのかわからないんです。面接のとき、当然質問されると思いますが、どう書けばよいでしょうか」と。「どう書けばいいでしょうか?」と言われても、空白なんだから、仕方がないじゃんということですよね。

向後:空白を自分で選択したのだから、自信を持って空白にするしかないですよね。

道幸:彼の場合、就活がうまく行かなくて悩んでいたとき、「あきらめずに(就活を)続けた方が、絶対いいから」とこちらからアドバイスしたのですが、お母さんの「やりたいこと見つかるまで、家にいなさい」という一言で結局やめてしまうんです。それから、そのままずっと家にいて、就活も1年に2〜3回説明会に行く程度で、そうした状態が2年ぐらい続いたんですよ。それで、やっとやりたいことが見つかったので来たけれども、「この空白の2年間をどう説明したらよいでしょうか」って聞いてくるんですよ。「だから、あのとき言ったやろ?」という話になるんですよ。そういう子は最近すごく多いですよ。

向後:それで、その子は、行けたんですか?希望した会社に。

道幸:いや、あの、結局エントリーしなかったですね。

向後:え?エントリーはすればいいじゃないですか?だめもとでもいいから。

道幸:そう、だめもとという感覚がないんですよ。

向後:そうか、失敗するのが怖いんだものね。

道幸:傷つきたくない症候群と言うか・・。

向後:ん〜?

道幸:「学生から社会人になるこのわずか1から2年、長くても2から3年というのは、失敗しても許される時期なんだから、最初から100%完璧を求める会社なんてどこにもないんだよ。失敗が許される若手の新入社員なんだから、はちゃめちゃやらなきゃだめだよ」って授業では言うんですけど、「そんなこと言いますけど、もし本当にそうして失敗したら、先生はどうやって責任を取ってくれるんですか?」って、学生は言いますからね。

向後:自分の人生だから、自分で責任取らなきゃね。道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

道幸:責任とるのは自分らですよね。責任と言うのは、実際学生から聞いた言葉でも、親からあれやれこれやれと言われるじゃないですか、まあ、いつの世代にもあったことだと思いますが、今の彼らは、親に何か指摘されたり、注意されたりしたら、話が過ぎ去るのを待つという姿勢で、「はいはい」って返事をする訳です。ところが、実際それからどうするかと言うと、言われたことをそのままやるらしいんです。やることによって仮に失敗しても、自分が選択した、意思決定したものではないから、親に言われたことということで、責任転換ができると言うんですね。そうやってちゃんと、逃げ道を必ずどこかに作っておくんです。

向後:失敗したときの逃げ道を最初から考えておく訳ですね。そうしたら、ギャンブルは勝てないなぁ〜。(笑)

道幸: そういう感覚は、みんなありますね。

向後:そうした感覚は、不安が前提になっていますね。

道幸:そうそうそう。そうなんですよ。

(つづく)

▲ページの先頭へ