カウンセラーの対談

第19回 道幸俊也氏、向後カウンセラー対談<第2回>

道幸俊也 プロフィール

道幸俊也氏 資 格
キャリアカウンセラー(CDA)、オンラインカウンセラー(JOCA)、MBTI認定ユーザー (Japan-APT学会)

経 歴
人材アウトソーシング会社に入社。業務管理などの経歴後、米国シリコンバレーにある関連会社へ赴任し3年間滞在。途中、日本能率協会米国支社のプロジェクトに1年間参加などをする。日本帰任後は新規事業を立上げ、その後独立しOffice C&Mの代表取締役となり、キャリア開発をメインに人事戦略コンサルティング事業を展開する。現在、社会人向け(企業・行政・NPO法人)に自己理解のセミナーを実施するとともに、複数の大学において非常勤講師としてキャリア開発教育の講義とカウンセリングを担当している。

 

インタビュー第2回

向後カウンセラー(以下 向後):想定外という言葉が去年から話題になっているけど、想定外のことって必ず起こるじゃないですか?しかし、大人の社会をみまわすと、リスクマネジメントばかりでね、つまりリスクが危険が起きないように起きないようにというばかりで、何か起きた時のいわゆるクライシスマネジメントが、全然できてなかったじゃないですか。大人の世界でそんな状態だから、学生さん達もわからないんじゃないかな?クライシスマネジメントの考え方が。

道幸俊也(以下 道幸):そうかもしれませんね。

向後:必ず失敗するじゃないですか?そのときにどうリカバーするかっていうことができてない感じがしますがね。だから、不安になる。

道幸:たぶん、世の中で成功している人たちは、最初から成功していると思っているんじゃないんですかね?そんなの、まずないじゃないですか?道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

向後:そうですよね。それで、見ていると賢い人たちも心配だなって思っちゃうんですよ。成績のいい人たち、いわゆるいい大学を出ている人たちも含めて、そういう人たちが、かなりぽきっと折れることがあるんですよね。

道幸:成功体験しか積んでない人多いですよね。

向後:失敗したことがほとんどないから、逆に失敗するのを極度に恐れているって感じなんですよね。そういう人たちがね、学校ではいい成績を修めるんだけど面接で失敗するじゃないですか。そうすると、心が折れちゃうんですよね。

道幸:なんでなんですかね?例えば、有名校とか、難関校は、どちらかと言えば、推薦やAOより一般入試で入ってくる子が多いと思うんですね。だから、競争意識と言うのがあると思うんですよ。推薦やAOで入って来た子は、就職活動と言うのが初めての競争なので、1回面接でダメだと、それで全て自己否定されたみたいな感じになって、自分はダメ人間ということになっちゃうんですよ。一方、一般組で入って来た子が、入試でだめだったとかの経験もしてきているわけですよ。そういう人たちは、1回2回と面接で落ちてもへこたれず這い上がってくるんですけど、推薦AO組って本当にダメで、特にAOの学生は、「面接で大学に入って来たので、面接は大丈夫です」って言い切るんですよね。でも、大学入試の面接と就活の面接を一緒にされたら困るわけです。基本、大学は入ってもらうのが前提じゃないですか、企業は金かかっているし、落とすのが前提ですからね、たくさんいますからね。そこの視点が違うんで・・、でも、推薦AO組の子達は「大丈夫」って言い切るのですよ。一方、一般組は、うちクラスの大学の場合は、入試のときに、どこか落ちて来てうちの大学に来たという子が多い訳ですよ。そういう連中は、割り切ってがんばります。しかし、難関校、上位校の連中って、ま、最初からお受験と言う形でずっとがんばってやってきて、それで、自分は選ばれし者みたいなプライドがあって、自分がダメ出しされるはずが無いというところがまずあるので・・。企業に就職すると言うのは、まったく大学みたいに点数じゃないので、よく言われますけど、結婚と同じで相性ですからね。やはり、企業側が欲しいと思っている人材であれば、別にそんな大学のレベル関係なく欲しいですし、難関校、上位校で変に天狗みたいな学生は、かえって困ると言う企業がありますからね。そのへんのことを総括すると、企業側が言っているのは、やっぱり素直な子が欲しいと。頭が良かろうが何であろうが、とにかく素直な新入社員がほしいんですよ。今、最終的にどういうところを見ているかと言うと、自分の所の顧客とちゃんと合うような人物像かどうかとか、あるいは、今のうちの若手社員とちゃんとなじめるかどうかを見ると言われます。いくら成績良くてもこんなやつだったらだめと思ったら採用しない。小売店などと取引する企業の場合、小売店自身もお客さんと接してサービス業に徹しているところなんで、コミュニケーション力がないとだめなのですけど、難関校・上位校出身者の中には、コミュニケーション力のあまりない人がいます。小売店に行って却ってけんかになるなんてことも過去に何回かあったらしいですね。小売店側からすれば、「あんな使い物にならん営業マンよこすな」というわけです。

向後:そうすると、その若手社員の方は、「何で僕の言っていることがいけないんですか」ってなっちゃう。

道幸:逆に、コミュニケーション力がある子は、順当にうまく行きますね。

向後:例えば面接するとき、コミュニケーション力というのはどんなところで見ているんですか?

道幸:よく言われているのは、人物像と、今後の可能性、うちに入って来て今後どのような可能性があるかとか、志望の熱意、この3つを見ていますよね。スキル面で言うと、コミュニケーション力と主体性があるかどうか、つまり指示待ち人間じゃないと言うこと、それと、論理性、筋道立ててちゃんと理由と根拠が言えるかどうかと言うこと、この3つは見ると言われていますね。

向後:面接の時間限られているじゃないですか?それで見れるものなんですか?

道幸:人物像とか、今後の可能性とかは、エントリーシートの中のエピソードとかを見て、こうこうこういうことを経験して来ているんだ、だったらうちのこの業務で彼だったらこうできるなというのをイメージできるかというのと、そういった中で、こういったつらい思いをしたとか悔しい思いをしたからこうやってきたとかの感情が表現されていたら、そこで人物像を見るとか。

向後:エントリーシートから見て行く訳ですね。道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

道幸:それを確認するのが面接の場なんで。ここにこう書いてありますけど、この辺もう少し教えてくれますか・・という感じですね。

向後:でも、面接も、ものすごい分量ですよね。

道幸:そうですね。あるIT会社の一時面接の選考官を3年ぐらい担当したのですが、1日12名ですからね、30分おきに途中休憩が入るのですが、後半になったらもう、一番最初に会った子どんな子だったっけという感じですよ。

向後:今はもうひとり何十社も受ける訳じゃないですか。そうすると、面接の回数も以前とは比べ物にならないくらい多いですよね。

道幸:他に、日本キャリア開発協会(JCDA)のキャリアカウンセラーの1万人の大会というのがあって、僕は、ここで講演しなくてはならなくて、その流れでディスカッションになったんですね。そのときに法政大学の宮城まりこ先生が、キャリアセンター長になられている方なのですけど、学校組織代表のパネリストとして出席されていました。民間企業ではある大企業の人事部の人が出て、まあそこで、いろいろディスカッションしたのですけど、宮城先生は、学校側の立場として、「わずか5分、10分の面接で何がわかるんですか」、「もっと、時間をかけて1時間ぐらい面接してもらわないと学生のことなんてわからないじゃないですか?」みたいなことおっしゃるわけですよ。しかし、大企業クラスになると何万人って来るらしいですね。そこで、まずそんな時間が物理的に割けないと。かつ、エントリーシートも正直言うと、そんなにゆっくり読めないですと。どうしてもそこで、別の基準と言うか視点というものを作って、そこでふるいにかけるしかないんです。「そうしたら、一括採用とかではなく、他の手段を考えていないんですか」と言ったら、その大企業さんは、リクルーターをちょっと別に用意していて、いろんな大学にもぐりこませるんですって。ここの大学は、何々ゼミとか何々研究室がいいらしいという噂を耳にしたら、そこのゼミとか研究室にピンポイントに交渉しに行くって言うんですよ。そこのゼミの子は、相対的に他のゼミの子より主体的に活発にやっているという情報があったら、そこに声をかけて行くということをする。

向後:それも一つの手なのでしょうけど・・。確かに、一括採用じゃ大変ですね。まじめな人はエントリーシートも丁寧に見るかもしれないけど・・。

道幸:まあ、丁寧には見れないでしょうね。最近みんな同じようなことばかり書いてくるので、読む方も「またか」という感じでスルーしちゃうこともあるらしいですよ。

向後:また、そこで、就活塾じゃないけど、「こう書け」みたいなことがあるのかもしれないですね。

道幸:そうですね(笑)。面白いエントリーシートの形式もあります。最近流行のエントリーシートってA3で、とにかく自由表記しなさい、イラスト写真なんでも使ってもかまいませんというパターンが増えて来て、これはこれで、学生はまた困っていて、「何書けばいいんですか」みたいになるのです。このあいだ、おもちゃ会社を受ける子がいて、まだ真っ白だったんですよ。「どうする?」って言ったら、人生ゲームってあるじゃないですか?彼は「それを書く」と言い出して、あれ双六じゃないですか、生まれてからこれまでの自分の人生を書いていて、ここに就活があって、これから10年先あたりまでをうまーく書いたのですよ。通りましたね。彼。

向後:すばらしい。

道幸:その時々の出来事を、まあ、親と旅行に行ったというところでは、写真を貼っているんです。小学校の体育祭で応援団をやったみたいなときは、応援団の写真を貼ったりとか。あー、これわかりやすいなーと。

向後:すごい賢いですね。そういう目立つ子だったら、採用はされるでしょうけど・・。

道幸:最近動き出しているのは、一括採用はどうしたものかということです。それよりも、独自のリクルーターを作って各大学にもぐりこんでアクセスさせるやり方を復活させると言う企業が増えてくるのではないかということも言われています。

向後:昔のやり方ですよね。

道幸:それが今度は、会社がリクルーターを抱えているのではなく、また、別にリクルーター専門の会社ができて来ている。

向後:さっきの、学校に潜り込ますって言うんですが、どうやって潜り込むんですか?学校に訪問に行って、インタビューするんですか?

道幸:4年生なんかの学内??セミナーとかあるじゃないですか?ああいうのがあったら、すーっと入って行くんですよね。

向後:学生のふりして?道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

道幸:学生のふりじゃなくて、企業のふりして、企業の学内セミナーがあるときというのは、学生は食堂とかにたむろしていますからね。声かけているんじゃないんですか?

向後:それじゃぁ、学生側にしてみれば、油断も隙もないですね。

道幸:あー、そりゃぁもう、ほんとすごいらしいですよ。企業はそういうリクルーター専門の会社にもお金を出して、ほんと興信所ですよね。

向後:興信所ですよね。あんまり気持ちよくないですね(笑)。

道幸:どこで見られているんだって感じになりますね。

向後:そうすると、元々周りのことを気にする子達がますます気にするようになっちゃいますよね。

道幸:そういうのがこれから主流になるとしたら、これからみんな動けなくなっちゃいますよね。

向後:いつも監視されているみたいで、嫌だな・・。ところで、そもそもエントリーシートとかいつごろからはじまったんですか?

道幸:あれは、いわゆるリクナビとかああいうサイトができあがって、インターネットが立ち上がってからですもんね。97、8年あたりからでしょうね。それまでは、分厚い本が送られて来て、その中から資料請求のはがきを送りなさいみたいな感じでしたね。

向後:ああいうシステムができあがっちゃって、10何年前あたりから、就活も大変になったですよね。今、3年生の後半から始めるんですよね。

道幸:去年から10月からが12月開始になりました。しかし、12月になったおかげで、学生の中に変なムードができあがってしまって、わずか2ヶ月なのですが、でもまだ2ヶ月あるから大丈夫という変な安心感が漂っていて、以前でしたら、早い子は、10月と言っても8月ぐらいからみんながんばっていたのですが、開始が2ヶ月遅くなったら、まだあるからだいじょうぶと言う感じで動かずに、ふたを開けてみたらみんな動いているというのであわてて動き出すのですが、今から動き出してももう遅かったなんていうケースを見かけますね。

向後:んー。僕らの頃なんて言うのは、4年生の5月ぐらいから動き出して、まあ、連休明けはさすがに動き出そうかって言う感じで、のんびりしてましたよね。

道幸:そうですよね。僕は理系だったんで、理系って研究室の先生から言われることって多いじゃないですか?「ここ行け」みたいな。僕の研究室もその口だったですね。

向後:僕も理系だったので、そうでしたね。それで、その頃就職も良かった時期だし、全く苦労しなかったですね。

道幸:隣の京都大学の連中なんかすごかったですもんね。1年生のときに、僕も関西だったので、大手電器メーカーなどが、1年生の工学部でちょっといいと評判の子がいたら、食事に連れて行き、それで内々定ぐらいもう決まっちゃうんですよ。恐ろしいなって思いましたね。道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

向後:なるほど。僕の時も就職良かったんですよ。ほんと、苦労しなかったですね。こちらが選ぶ方だったですね。この会社行きたいということで動き出したら、あっと言う間だったですよ。人事面接があって、そのあとすぐ偉い人との面接があって、で、もう決まっちゃったみたいな感じでしたね。

道幸:あの頃は早かったですもんね。

向後:当時の就活って、実質3ヶ月ぐらいでしたかね?

道幸:今みたいに長期にわたって5回も6回もなんて事は無いですよね。

向後:今3年の12月から就活を始めるじゃないですか。下準備を含めるともっと前からかもしれないけど、さらに、インターンをやっている人もいるでしょ?あれも就活って言っていいのかな?

道幸:んー、まあ、企業側はインターンシップに来たからと言って、アドバンテージはありませんと言うけれども、実際はふたを開けるとインターンシップを受けた子に対しては、エントリーシート免除みたいなケースもあったりします。

向後:だから、気が抜けないですよね。

道幸:学生にとっては、インターンシップって職場体験じゃないですか。ま、どこの会社に行こうが、例えば営業職やりたければ、営業のインターンをやれば、それは、体験になるわけです。それで、今後どうやるかということを考える場になるという意味なんだけれど、彼ら(学生)は、そうはとらなくて、「インターンシップ行った方が内定率高くなりますか?」、「行ったほうがいいですか?」って聞いてくる訳です。「なんで?」って聞くと、「インターン行った方が、採用されやすいって聞きました」って言うんです。「だれが、そんなこと言ったの?」みたいな状態なんですよ。

向後:学生の間では、ぱーっとそういう噂が流れるみたいですね。

道幸:最近すごいんですよ。SNSがあるから。このあいだも、法政大学でやっているキャリア支援研究会と言うのがあって、僕はそのメンバーなんですけど、そこに来ているのが大学の職員か、教員か、企業人事。だいたい毎回20人ぐらい集まるんですけど。で、話をしたときに、ネットでの炎上の話がメインになりました。去年、ご存知ですかね?ある有名大学の子が、内定取り消しになったって言うニュース。大手企業に内定もらって、それでその子が、面白おかしくですよ、ちょっと誇張して面接官の態度とか表現とかがどうだったというのを書いちゃったんですよ。そうしたら、それを「ツイッ拓」と言ってコピーをポンと貼られたら半永久的に残っちゃうサイトがあるのですが、それで、悪意のある連中が、それを見て、「ツイッ拓」にべたべた貼っちゃったわけですよ。本人は、そこで削除してももう遅いわけです。残っているのを一般の方が見て、その大企業に、「お宅の会社は、こんな学生に内定を出すのか?」ってクレームが殺到したんですよ。そうしたら、人事部総出で、誰だって探して、見つけて、その子内定取り消しになっちゃったんですよ。

向後:んー。

道幸:それが去年一番大きかったことで、つい最近では、ある女子大学生が、合コンの場での会話を、実況中継みたいな感じでツイートしたわけです。「目の前にいる男子きもい」とかいっぱい書く訳ですよ。それもまた、ぺたぺたツイッタクに貼られるわけですよ。その瞬間に、一般の人が見て、学校に「お宅の大学は、こんなに品行がよろしくないのか」ということで、その子は見つかって、今無期停学です。

向後:かわいそうですねぇ~。だって、自分のことを顧みたって、大学時代は、品行方正じゃないですよ。僕なんか、すごく 品行不方正 だったですけどね。そういえば、女子サッカーの人も同じようなことで批判されていましたよね?最近、こういうことが多いのですかね?

道幸:そうそう。それの実例集みたいなのがあって、勉強会のときに出されて、有名私立大学だとか、いっぱいいろいろなケースがあるんですよ。それを人事側の人に「よくツイッターとかSNSとかmixiとかチェックするという話をよく耳にするけど本当ですか」って聞いたら、人事の人は「チェックしてます」って言っていました。最終選考まで残ったのは全員チェックするそうです。Google yahooのメールアドレスから、ブログがあればチェックし、Facebookとツイッターでチェックし、全部調べて、友達と普段どんな会話をしているかというのを見ると言っていました。

向後:恐ろしいですね~。

道幸:恐ろしい~。ツイッターなんか匿名じゃないですか。でもIPアドレスから調べたら、どこの大学からアクセスしているかすぐわかってしまいます。そして、ツイッターごとぺって貼られたらその裏の情報まで貼られてしまうことになってしまうので、名前まで特定できるんですって。だから、学生の中には、「そんなに自由にできないものなのか?」、「言いたいこと言わせろよ」みたいな声もあるのですが、そういうぺたっと貼る、ネット民と言われる、例えば2チャンネルに投稿する人たちみたいな人たちから言わせると、「タイピングをして、もうエンターキーを押したら全世界の人間に見られているもんだという意識がないとだめだ」と言っていますね。それは、確かにそうだなとは思いますね。「だから、探されてもいいようなことを書くようにしなければならないんだよ。それくらいのことを、大学生がわからないのか」というのが、彼らネット民たちの意見らしいですけどね。

向後:まあ、それも一理ありますけどね?。でも、どこで、息抜いてしゃべれるのかっていうことですよね?

道幸:まあ、ただ、そういう、仮想空間ではなく、対面でオーラルで、1秒後には消えるというところでないとしゃべれないのでしょうけど、それができない子達が、そういうところにいるわけですからね。

向後:そうですね。ツイッターとかFacebookとか、ああいうところではじめて自分の意見が言えるという人たちもいますからね。人とオーラルでしゃべっていると、今の時代空気読まなきゃいけないらしいですしね。

道幸:そういうあの、何というんですかね。ネットのエチケットという意味で、ネチケットってあるじゃないですか。僕らの世代は、そういうのを知った上で入って来ているので、このネットというものを使うに際しては。そういうのに配慮とか気配りをしないと、たとえ仮想空間といえども、良くないなというイメージはあるんですよ。ところが、今の子達はリアルがだめだから仮想空間に行っちゃえみたいなところがあるので、結局、足もとをすくわれていると言う感じを持つ訳です。ネットだからというわけではなく、ネットも通常のコミュニケーション力が必要なんじゃないかと思うんですよね。

向後:ほんと必要だと思いますよ。ツイッターでもFacebookでも、やっぱりだれかが見る訳だから、だれかが傷ついちゃうこともあるわけで、傷つけないようにとか失礼の無いようにとかは、考えて書かないとね。

道幸:残りますからね。文字として。証拠が。道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

向後:怖いですよね。いくら削除したって残っちゃう。

道幸:たぶんそういう意識、全くないでしょうね。なんか、誰か、パソコンの前に座っているとネットとつながっているという意識を持っている学生が多いんですって。でも、こういう子達が携帯を使うとき、この向こうにはネットの世界があると言う意識が無くなってしまうっていうんです。携帯の向こうには、パソコンと同じようにネットにつながる世界があるという意識が無くなってしまう子が多いみたいですね。

向後:いやぁ~、しかし、企業もFacebookとか全部チェックするということですね。ツイッターも本名が特定できる訳ですね。

道幸:それ聞いて、これはやばいということで、大学の教授会で話をしたのですが、そうしたら、「9月のオリエンテーションで全学年にこのことをアナウンスしてください」って言われました。やっている子いっぱいいますからね。

向後:ものすごい人数の人が使っている訳じゃないですか。ツイッターは匿名なはずなのに、特定されちゃったら怖いですよね。Facebookは実名だし、覚悟して発言していることはあると思いますけどね。

道幸:お互いそういう覚悟していると言う前提なので、Facebookでは、あまり誹謗中傷も無いですね。

向後:ツイッターはひどいですよね。

道幸:あー、来ますよねあれは。

向後:僕も批判されたことありますけどね。まあ、あんまり相手にしないで、放っておいているんですけどね。言いたきゃ言えばいいと思っているんです。こちらが何も反応しないと、そのうち消えてしまうことが多いですからね。でも、ああいうネット上での批判で、けっこう傷つく人もいるみたいだし、うつになっちゃったなんて人もいらっしゃるし・・。ぼろくそ言いますからね、あれ。

道幸:ネットに依存しちゃっている子は、ほんと寝ても覚めても何かやってますよね。そういう子達に限って、朝起きたらまず、Facebookとかツイッターにアクセスして、いいね!とかRetweetがちゃんと来ているかどうか、自分の書いたことに反応があるかどうか確認してから、トイレ行ったり歯を磨いたりするらしいんですよね。完全にそれが無かったらだめみたいな世界になっちゃっているのです。前は、メールでone to oneのコミュニケーションができていたのが、それが、むしろ、ツイッターでのコミュニケーションの方が、普通の友達どうしでは、当たり前になっているらしくって・・。こないだ面白かったのは、「ツイッターのせいで留年しました」という女子大生がいて記事書いていたのですが、それは、ある定期試験のときに、まだ勉強が進んでいないと言うことを友達同士でやりとりしていたわけですよ。そしたら、「私もまだできていない」みたいな感じになって、要はそこで、お互いに傷のなめ合いをしている訳ですよ。「難しいよね?」、「できないよね?」というのでお互いやりとりをしているうちに真夜中になり、2時になり、ずーっとやっちゃったわけですね。結局眠くてしょうがない。勉強もやっていない。それで、「すくなくとも2時間は勉強やっておかなきゃ」となって、「お互い4時までがんばろう」ということになったんです。ところが、そのまま寝ちゃったんです。

向後:ははは(笑)。

道幸:寝て目が覚めたらもうお昼だったんです。それ、午前中の試験だったのですが、要するに単位落として留年しちゃったわけですよ。で、そのことを彼女は、まあ、自虐ネタみたいに書いているんですが、「それを機にツイッターのアカウントを削除しました」って書いてありましたね。もう怖いと思ったらしくて。

向後:んー、ほんと強迫的になっちゃう人いっぱいいますよね?。

道幸:たぶん、そういう人、いっぱいいるんじゃないんですかね?

向後:それで、就職関係で言うと、さっきの企業の例でもあったけど、けっこう面接の内容を書き込んでいる人いるみたいですよね。例えば、「どこそこは、圧迫面接だった」とか。それで、企業が逆に怖がっているというところもあると聞きましたが・・。

道幸:みん就というサイトがあるんですよ。「みんなの就活」という意味です。ここは、どの企業を受けたかと言う企業名毎のカテゴリーがある。そして、その企業を受けた人が、「今日の面接、こんなこと聞かれたよ」とか書き込む訳ですよ。それを見て、他の連中が、「こういうことを聞かれるんだ」ということで対策を立てるというサイトがあるんですけど、あれも実は半分サクラがいるわけで、採用代行をしている会社の人間が学生になりすまして、圧迫系の面接が実際に会ったとしても、「どうも、こんなこと聞いているみたいだよ」などと、わざとフォローするようなコメントをするということもあるようで、そうやってイメージを良くしようとしている連中もいるみたいですね。

向後:うゎー、ややっこしいですね。そうなると・・。<道幸俊也氏、向後カウンセラー対談

道幸:僕は「みん就」については、学生には、「半分信じて半分信じるな」って言っているんですけどね。もう、どれを信じたらいいのかわからないというので、結局学生は、そういう情報に振り回されて、「リクナビ」とか「マイナビ」とかそういうサイトに登録していると、なんだかんだで、1日100本ぐらいメールが飛び交いますからね。結果として、その中に重要なメールがあったのに見過ごしちゃって、面接をすっぽかしてしまったなんて例もありますね。ほんと、情報に振り回されて、うまく取捨選択ができないと言うか・・。

向後:なんかシステムが複雑になりすぎたように思えますね。今のお話を聞くと、情報はあふれているけど、そのおかげで学生は混乱して、変な噂も飛び交うし、採用する側は採用する側で、エントリーシートを丁寧に見れる時間が無いしということで、なんか非常に変な事態になっていますね?

道幸:お互い使いこなせていないんですよね。本来ITなんてものは効率化するためのものだったのですが、逆に効率が悪くなってしまっている。

(つづく)

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