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カウンセラーの対談「第16回ウォン・ウィンツァン氏、向後カウンセラー対談<第2回>)」
第16回ウォン・ウィンツァン氏、向後カウンセラー対談<第2回>
ウォン・ウィンツァン氏 プロフィール
ピアニスト、即興演奏家、作曲家
1949年神戸にて、香港出身の父、日本と中国のハーフの母との間に生まれる。1歳より東京で育つ。
19歳よりミュージシャンのキャリアをスタートし、ジャズ、前衛音楽、フュージョン、ソウルなどを演奏。その後、スタジオレコーディング/ステージミュージシャン、作編曲家として活動を続ける中、自らの音楽を模索。
87年、瞑想の体験を通して自己の音楽の在り方を確信し、90年よりピアノソロ活動を開始。この頃に現在のウォン・ウィンツァンのピアノソロ・スタイルが生まれる。
92年、インディーズレーベル SATOWA MUSICを発足、1'stアルバム「フレグランス」がFMから火がつきロングセラーになる。以後コンスタントにサトワミュージックよりアルバムをリリース、その数は20タイトルを超える。代表作に「Doh Yoh」「エイシアンドール」「たましいのトポス」「光の華」など。
また、NHKスペシャル「家族の肖像」、BShiスペシャル「中国世界遺産 九寨溝」、現在 季節放送中のNHK「にっぽん紀行」、そして毎週放送の長寿番組 Eテレ「こころの時代」のテーマ曲も手掛けている。
ピアノソロ以外にも、地雷犠牲者救援CD「もしも地雷がなかったなら」、クラシックアルバム「Debussy」、ジャズトリオ「WIM」など、多岐の音楽活動をおこなってきた。
2011年1月、19歳から数年の活動の後に解散した、フリー・インプロヴィゼーション・グループ「白カラス」を再結成。かつてのメンバー、山本公成、YAS-KAZと共に「解体と蘇生」というテーマで、新たな実験音楽の活動を始めた。
そして… 3・11を受け、3月16日より被災地に向けて、インターネットによるUSTREAM配信「サトワより祈りを込めて」を開始、ピアノソロを中心に鈴木重子さんなど数名のゲストを迎えながら、全35回に及ぶ配信を続けた。
また4月6日 風のホール「新たなる祈りのトポス」など一連のチャリティーコンサートを行い、支援金を募り、被災地に送り届けることが出来た。
ピアノソロ・コンサート、とくにインプロヴィゼーション(即興演奏)では、音の力でオーディエンスの深い意識とつながり、解き放たれた静寂空間を創り出してゆく。超越意識で奏でるその透明な音色に「瞑想のピアニスト」と呼ばれている。
お問合せ先:サトワミュージック 03-3950-8634
インタビュー第2回
ウォン・ウィンツァン(以下 ウォン):昨日、南相馬の人達が2泊3日で横浜に来ていたんだけど、彼らは、「解放された」と言っていたんだよね。出る必要があるねと思いました。彼らは、南相馬にずっといたわけですよ。それで脱原発会議というのに出てきて横にスライドしたわけだけど、出てくることによって、気持ち的に彼らの中で変わったところがあるのではないかなって僕には思えたんですよ。(横浜に来られていたのは)4人なんですけどね。彼らがリーダーシップをとって、南相馬の人達が解除されていけばいいなって思います。彼らは対話って言葉を使います。対話によって南相馬の新たな未来につなげたいって言うんですよ。20年、30年と汚染が続くわけだし、その事をうすうす感じながら、解放しようとしているんだよ。外の人達と、ダイアローグという言葉を使っていたけど、対話しながらね。
向後カウンセラー(以下 向後):4人でも横浜に出てくるということがあると変わってくると思いますね。その一歩がなかなか踏み出せないんですよね。たぶん、南相馬の人達は、現実を受け入れていくと思うんだけど、直面するということは怖いことなんですよね。
ウォン:線量がはっきり高いところなら受け入れやすいんだけど、グラデーションがあるじゃない。これだけの線量があれば、こうなるというはっきりした指標があればいいんだけど、ないじゃない。だれも先が見えない世界にいるからさ。いやー、原発は、そう考えるとあっちゃいけないね。
向後:あれだけのことがあったらね。
でも、僕、元エンジニアじゃないですか。つい、こうすれば上手くいくんじゃないかなんてことを考えちゃう。
ウォン:技術屋さんって、そうだよね。ある原子力の勉強した人間が、原発事故が起きた時に、一番最初に「あっ、あれは大丈夫なんです」って俺に言うんだよ。理路整然と言うんだよ。技術的には、テーブルの上で描いた設計図上は安全なんですよ。でも人間がやっているっていうことを考えないんだよね。どう考えても、人間がミスをするんだよね。でも、ある人が、「いや大丈夫だ。これは人間がミスをしたから大丈夫だ」って言うんだよね。
向後:??どういうことですか?
ウォン:要するに人間がミスをして事故になったのだから、人間のミスを修正すれば事故は起こらないって言うことをツイートしてた人がいるんだけどね。
向後:なんかよくわかんない考えですね。
ウォン:理論的に破綻してるよね。
向後:エンジニアの姿勢としてもどうかと思いますね。実は、壊れることはあり得るんですよ。僕は、カウンセラーになる前は、破壊力学というのをやっていたんだけど、欠陥とか亀裂って必ず生じるんですよ。ああいうものを100%検出するのは無理なんです。放射能は密閉されていると言ったって、それが何十年もたったらどうなるのかということはだれも予測できなくて、でも、だいたい安全だろうというところで運転しているわけですよ。ところが、想定外のことって必ず起こるわけですよ。起きちゃったときにどう対応するかということが大切なんです。
ウォン:原発事故は、広さにしたら二百万人ぐらいに影響が出るわけでね。
向後:その視点が必要だと思うんですよ。要するになんか起きた時に、いったいどうなっちゃうか?それに対する責任がちゃんととれるのか?それを収束させるのにどのくらいかかるのかっていうことを考えなきゃいけない。事故が起きたら何十年も収束できないわけでしょ?そういう設備を使っていていいのかと疑問に思います。
ウォン:何より日本が地震国だからね。
向後:千葉の石油会社が地震直後火災になって、一度デマになって大騒ぎになったけど、すぐ事故は収束するじゃないですか。しかし、原発の場合は、例えばプルトニウムがでてしまったら、半減期は二万四千年残っちゃうわけでしょ。そうすると、それはちょっと次元の違う話だなと思うんですよ。
ウォン:それを同じ次元で話そうとする人がいるんだよね。飛行機事故の確率と車の事故の確率と原発の事故の確率を見てみろとか、ホントに平気で言えちゃう人がいるから・・経済学者なんかでもいるしね。
向後:例えば、石油プラントの場合、重大な事故が起きても、燃料のバルブを閉めて、圧を抜いて、温度を下げるための措置を講じてということができますが、原発の場合は、そうはいかない。放射能がありますからね。
ウォン:バルブ閉められないし、ベントできないし、爆発しちゃうし・・。
向後:ベントしたら、必ず放射能は漏れるわけですよね。
ウォン:そうそう。それだって、「いや大丈夫です」って言われたんだよね、NHKで。
向後:そうそう。僕も言われたから信じましたよ。まさかそんなことウソを言うとは思わなかったから・・。
ウォン:今回のことではっきりしたよね。連中平気でうそをつく。今回ぐらい国とか報道とか信頼性が地に落ちたことは、なかったですね
向後:NHKについては、僕は途中から見直したんだけど。
ウォン:最近ね。NHKの中で報道番組の中ですごいいいのやっているのあるんだよね。
向後:だれがどこまでわかっていて、だれがウソを流しはじめたのか分からないんですよね。暗黙の了解で、グループエネルギーの中で「メルトダウンは起きてないよね?そうだよね?」って言いあって疑うことを放棄して、そっちの方に行ってしまったんでしょうか?
ウォン:それしか考えられないんだよね?グループ心理の中で、いい方に考えたいみたいな心理が働いたり、事故そのものをなるべく小さく見せたい、自分が言ったことで上からなんて言われるかわからないと言う保身の心理とか、ぞういうものが全体として働いてああいうことになったんでしょうね。
向後:原発で何が起こっていたか、早い段階で、わかっていた人がたくさんいたはずだと思うんですよ。最初データが公表されなかったじゃないですか?どこかの時点でだれかがわかっていて、それを言わなかった。
ウォン:だってさ、白い服着て眼鏡をかけた人が、住民の人に「お願いだから逃げてくれ」って言ったって言うんですよ。その人は消えちゃって、そして誰だかわからない。だけど、その人が「お願いだから逃げてくれ」って言われたおかげで被爆しないですんだ。だから、作業員の誰かがたまたま通りかかって、「なんでこんなところにいるんだ?!」っていうことで、早く逃げてくれって言ったんでしょうね。ただ、オープンにはそういうことはありませんっていうことになっています。
向後:3月の終わりぐらいまでは、メルトダウンなかったっていう話だったですよね。でも建屋はぶっ飛んじゃっているし、「うーん・・」って感じだったですね。
ウォン:最初は爆発のシーンは公開されなかったんだよ。最初はyoutubeで見たんだもの。その後、NHKで公開されたけれども、当初は繰り返し「これは大したことありません」、「建屋が壊れただけであって、中は大丈夫です」みたいなこと言っていて、それを見ながらそのコメントを信じようとしていたオレもいたわけで・・。
向後:僕も信じました。これもまた技術屋のクセなのかもしれないけど。まず、「メルトダウンが起きていないとします」というのを前提にすると、燃料棒の一部が高温になったはずだけど、「メルトダウンはなかった」というのなら、そんなに膨大な量の放射性物質が放出されたとは思いませんでした。それだったら、冷却すればおさまる話しだなと思ったのですが・・。後から、「全部溶けてました」、「底が抜けてました」じゃねぇ。あれは、ひどいなと思います。
ウォン:ひどいよね。
向後:危機管理のシステムとしては最悪ですよね。最初に最悪の事態を伝えて、避難してもらって、ここまでは大丈夫でしたという感じで徐々に避難範囲を狭めていくという方がよかったのではないかと思いますが。
ウォン:今、そうした国のエネルギー政策から来る保安院のシステムを変えようとしているのでしょうけど、このまま原発やっていたら危険だなと思います。と、言うよりも、今のシステム自体が日本にある原発を管理できるわけがないと思いますね。
向後:僕は、原発事故の直後、どういう態度をとるか決めました。専門家と呼ばれる人達とか、会社とか公的機関の責任者と言われる人達の言葉は信じようと思ったんですよ。要するに、「まさか原発事故というとてつもなく大勢の人の命が関わることで、データのごまかしや言い逃れということはしないであろう」と考えたのですよ。そうじゃないとデマに振り回されちゃうから。
ウォン:僕もそう。
向後:最初の頃大変だったですからね。いろんなデマが出回って。そんなのに振り回されたら大変だから・・。専門家の人が責任を持って言うことは信じようと思ったんですよ。そうしたら、みなさん「大丈夫です」ということしか言わなかったじゃないですか。
しかし、結果的には「大丈夫です」というのは間違いだったし、責任のある方のだれかがメルトダウンという事実を知りながら隠していたと言うことになります。このため、次に危機的な状態になった時、どの情報を信じてよいのかわからなくなってしまいました。
ウォン:みんな困りますよね。今でも、公の情報を信用しない脱原発の人達は、ツイッターでいろいろな情報をデマも含めて流しているし、安心したい人達は、国の言うことは正しいみたいなことを言っているよね。
向後:その辺、もっと冷静な判断ってできないものかと思いますが。今回の負の遺産だと思います。
ウォン:僕も、ガイガーカウンター買ったよ。
向後:そうらしいですね。
ウォン:それで判断するしかないと思っているけど。インターネット上に出ている数字をある程度信じて、自分の目の前にあるガイガーカウンターの数値を見て、逃げるしかないと判断すれば逃げるということですね。
向後:自分で守るしかなくなっちゃったですよね。
ウォン:その方がいいと思いますね。もう、なんていうか、国が守ってくれると言うのは幻想かもしれないね。
向後:そうかもしれないですね。日本ってなんか、みんな守ってくれるって意識はありますよね。国がとか会社がとか・・。
ウォン:今回ほど、その依存体質を目の当たりにされたことはないよね。これでちょっと自立始めるかなぁ?
向後:最終的に自分が判断しなきゃいけないって言うのをつきつけられたって感じですよね。
ウォン:そりゃそうだよね。福島県を始め線量の高いところがありますよね。僕の友達で、食品の宅配サービスをやっているわけですが。約百六十万円で、放射能計測器を導入して、「これは大丈夫」というものだけを売ろうとしている。
向後:まあ、原発事故の問題は、日本のさまざまな問題を浮き彫りにしていると思います。これからもWatchしていきたいと思います。
(つづく)
- 第1回 東京えびすさまクリニック院長・山登敬之先生、青山初音カウンセラー対談
【心理カウンセリングと精神科診療の違い<前編>】 - 第2回 東京えびすさまクリニック院長・山登敬之先生、青山初音カウンセラー対談
【心理カウンセリングと精神科診療の違い<後編>】 - 第3回 吉福伸逸氏、向後カウンセラー対談<前編>
- 第4回 吉福伸逸氏、向後カウンセラー対談<後編>
- 第5回 小原仁氏、新倉カウンセラー対談<第1回>
- 第6回 小原仁氏、新倉カウンセラー対談<第2回>
- 第7回 オキタリュウイチ氏、新倉カウンセラー対談
- 第8回 松崎一葉氏、新倉カウンセラー対談<第1回>
- 第9回 松崎一葉氏、新倉カウンセラー対談<第2回>
- 第10回 松崎一葉氏、新倉カウンセラー対談<第3回>
- 第11回 斎藤環氏、山登敬之氏、新倉、向後カウンセラー座談会<第1回>
- 第12回 斎藤環氏、山登敬之氏、新倉、向後カウンセラー座談会<第2回>
- 第13回 斎藤環氏、山登敬之氏、新倉、向後カウンセラー座談会<第3回>
- 第14回 斎藤環氏、山登敬之氏、新倉、向後カウンセラー座談会<第4回>
- 第15回 ウォン・ウィンツァン氏、向後カウンセラー対談<第1回>
- 第16回 ウォン・ウィンツァン氏、向後カウンセラー対談<第2回>
- 第17回 ウォン・ウィンツァン氏、向後カウンセラー対談<第3回>